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昨日のことでした。
新宿駅の地下改札付近で知人と待ち合わせしていました。 ご存知の方も多いでしょうが、あそこには靴の簡易修理屋があります。 外出しているおり、靴のかかとやら何やらの調子が悪くなった人々の駆け込む、3分修繕所とでもいうのでしょうか。 別の靴を履いて当の靴は持参するというより、本当にちょっと前にサンダルのヒールがもげちゃって、というような風体の方が多く見受けられます。 普通駅のような場所で、故意に靴を脱ぐ人々の群れというのはなかなか見られないので、その模様はなんだか滑稽に感じられます。 いそいそと靴の着脱をする女性たちの中に、その方はいました。 外巻きパーマのかかったミディアムヘアに、昭和50年代頃流行ったような濃い目の化粧。 銀の模様の入った黒ニットと黒のスリムパンツ。 そして、肝心かなめの靴は、これも黒のパンプス。 彼女は、腰をしなやかに屈め、そのパンプスをなんとも無駄のない手つきで足からはずし、修繕屋のカウンターに無言で置きました。 言葉は発していませんでしたが、早くしてちょうだい、という尖った声が聞こえるようでした。 その、いかにも慣れたような動作と、厚化粧の顔を含め全身から漂うどこか擦れた雰囲気から、ああお水仕事の人ではないかしらと私は思ったのでした。 それはともかく、彼女がしなを作るさまなどが目に浮かぶようでした。 なぜその方のことが気になったのかわかりません。 ただ、数日前テレビで目にした「女が階段を上るとき」という白黒映画に出ていた女優と趣きが似ているように思いました。 それから、私の母が化粧台に向かっているとき、ふと垣間見せる「女」の部分とも通じるものがあったかもしれません。 化粧台の引き出しに何年も仕舞っていた香水の蓋をふと開けたときツンと鼻先をくすぐる香り。 あの女性の趣きはそれとどこか似ている。 私はときおり憧れを抱くのですが、けして真似することができないのです。 |
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